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電子カルテのクリニックでの普及率は?無床クリニック向けの選び方を解説

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病院よりも規模の小さなクリニックでは、導入にコストや手間のかかる電子カルテの導入に慎重になっているところも少なくありません。しかし、ICTの活用が進む医療業界において電子カルテの導入は必要不可欠です。日々の業務を効率化させるためにも、自身のクリニックに合った電子カルテを選ぶ必要があります。

この記事では、クリニックにおける電子カルテの普及の現状を確認したうえで、導入するメリット・デメリットや、無床クリニック向けの電子カルテの選び方などについて、簡単に、わかりやすく解説します。

クリニックにおける電子カルテの普及率

実際のところ、クリニックで電子カルテはどの程度普及しているのでしょうか。
厚生労働省の資料より、一般病院と一般診療所における電子カルテの普及率の推移は以下の通りです。

「電子カルテシステム等の普及状況の推移」
出典:厚生労働省ホームページ「電子カルテシステム等の普及状況の推移」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000938782.pdf

上記資料から、電子カルテの導入は徐々に進んではいるものの、導入率は一般病院では60%未満にとどまっていることがわかります。特に、200床未満の病院や一般診療所といった規模の小さな医療機関での普及率は50%以下です。
病床数が20床以上の医療機関を「病院」、19床以下を「診療所」と定義しています。そのため、診療所(クリニック)での電子カルテの普及率はまだまだ低いと言えるでしょう。

電子カルテの導入率についてこちらで詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
「電子カルテの導入率はどのくらい?普及が進まない理由と解決策を解説」

無床クリニックで電子カルテを導入するメリット・デメリット

クリニックを含めた医療機関での電子カルテの導入には、主に以下のようなメリットがあります。

・メリット1:患者の医療情報の管理・共有がしやすい
・メリット2:業務効率化につながる
・メリット3:カルテを保存する場所を取らない

しかし、以下のようなデメリットもあります。

・デメリット1:人的及び金銭的なコストがかかる
・デメリット2:機器の故障やシステムダウン時に使えなくなってしまう

特に、入院設備のない無床クリニックを経営するうえでは、外来診療をいかに効率的に行えるかが重要になってきます。そのため、カルテの数が増えても保存場所を取らず、業務を効率化させて患者の待ち時間を減らせる電子カルテは積極的に導入すべきツールです。

また、電子カルテを利用すればデジタルならではの機能を活用できます。例えば、よく使用する単語や処方・処置などを事前に登録して入力工数が削減できたり、過去カルテからのDo入力をすることが可能です。こういった機能の活用で、同じ内容を何度も入力する手間を省けます。

ただし、規模が小さな無床クリニックは少人数で業務を回していることが多いため、スタッフが電子カルテの扱いを覚えるまではある程度の労力がかかります。さらに、患者の診療情報を守るための運用ルールを策定して、スタッフにルールを浸透させる必要があります。

無床クリニックに限らず、すべての医療機関における電子カルテ導入のメリットについてくわしく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
「電子カルテを導入するメリットとは?在宅医療でも活用できる理由もあわせて解説」

無床クリニック向けの電子カルテの選び方

医療機関のうち入院設備のない無床クリニックの場合、電子カルテの導入に際し重視する部分が一般的な病院とは異なります。ここでは、無床クリニック向けの電子カルテを選ぶ際のポイントについて説明します。

クリニックの規模や環境に合ったものを選ぶ

電子カルテを選ぶ際、まず確認すべきなのは自身のクリニックの規模や環境に適したものであるか否かです。例えば、在宅医療を実施しているクリニックであれば、「在宅医療」に関する機能が揃っているのかといったチェックは欠かせません。

また、規模が小さくスタッフも少数であることが多い無床クリニックでは、診療所内のスペースが限られていることも少なくなりません。クラウド型の電子カルテであれば、サーバーや専用機器を設置する場所も不要となるため、コストや使用スペースを抑えられるでしょう。

クラウド型の電子カルテについては、こちらで詳しく解説していますので併せてご覧ください。
「クラウド型電子カルテとは?オンプレミス型との違いや、導入のメリット・デメリットを解説」

使いやすいものを選ぶ

使いやすいシステムであるか否かも、電子カルテを選ぶ際の重要なポイントです。特に外来診療がメインとなる無床クリニックでは、いかに患者を効率良く診察するかが経営の肝となってくるため、使い勝手の良さが求められます。

例えば、画面を見ただけで直感的に使い方がわかるデザインや、よく使う処方や処置についてセットを組んでワンクリックで入力できる機能が搭載されていれば、カルテの入力スピードは格段に上がるでしょう。

導入時のサポートが整っているものを選ぶ

電子カルテを導入するにあたっては、セキュリティ対策やトラブルが起こった際の対応などをどうしていくかも考えておかなくてはなりません。それらすべてを院内だけで行うのはスタッフの負担が大きくなるため、導入に関するサポート体制が整っている電子カルテシステムを選ぶのが安心でしょう。

トラブル時の対応については、院内でもルールを定めておくことが重要です。その際には、次項で解説する「運用管理規定項目」を参考にしてください。

クリニックにおける電子カルテの運用管理規定項目

クリニック内で電子カルテの運用についてのルールを定める際には、厚生労働省による「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の運用管理規定項目を参考にすると、大事な項目を漏れなくカバーできるでしょう。ここでは、クリニックで電子カルテを運用する際に必要となる「運用管理規定で定めるべき項目」について説明します。

管理する情報の範囲

(1) 総則
a 理念(基本方針と管理目的の表明)
b 対象情報
(a) 医療情報システムで扱う全ての情報のリストアップ
(b) 安全管理上の重要度に応じた分類
(c) 医療リスク分析
c 医療情報システムにおいて採用し変更をフォローすべき標準規格

出典:厚生労働省ホームページ「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版(令和4年3月)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000936160.pdf

医療情報システムの導入には多くのメリットがある一方で、サイバー攻撃による情報流出といった新たなセキュリティリスクが発生します。
こうした情報が外部に流出すれば医療機関としての信用に関わるため、厳重に管理しなければなりません。
そのため、基本的には電子カルテに保存されている情報すべてを管理範囲とするのがよいでしょう。

システム管理者

(2) 管理体制
a システム管理者、機器管理者、運用責任者、安全管理者、個人情報保護責任者等
b マニュアル・契約書等の文書の管理体制
c 監査体制と監査責任者
d 患者及びシステム利用者からの苦情・質問の受け付け体制
e 事故対策時の責任体制
f システム利用者への教育・訓練等の周知体制

出典:厚生労働省ホームページ「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版(令和4年3月)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000936160.pdf

システム管理者とは、電子カルテの管理について全責任を負う人のことを指します。院長や事務長などがシステム管理者となることが多いですが、院長や事務長がデジタルに強くない場合はトラブル時などに指示を出すことは難しいため、別にシステム管理の実行者を定めておいたほうがいいでしょう。

利用者

i 技術的安全対策規程
(a) 利用者識別と認証の方法
(b) IC カード等セキュリティ・デバイス配布の方法
(c) 情報区分とアクセス権限管理及び人事異動等に伴う見直し
(d) アクセスログ取得と監査の手順
(e) 時刻同期の方法
(f) 不正ソフトウェア対策
(g) ネットワークからの不正アクセス対策
(h) パスワードの管理

出典:厚生労働省ホームページ「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版(令和4年3月)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000936160.pdf

電子カルテに保存されている情報の改ざんや流出を防ぐため、アクセスできる利用者は制限しましょう。いつ・誰がアクセスしたかがわかるよう、利用者に個別のIDとパスワードを発行することも必要です。

システム責任者は、電子カルテにアクセスできる利用者を把握し、それぞれのID・パスワードをきちんと管理するようにしましょう。職員の退職時には、退職者が電子カルテにアクセスできないようにIDを削除することも忘れてはいけません。

ハードとソフトの管理

j IoT 機器の利用に関する事項
(a) IoT 機器の貸し出しに関するリスク受容の合意
(b) 異常時の患者及び医療機関等の役割、連絡先
(c) 異常の検知方法
(d) セキュリティ上重要なアップデートの方法
(e) 使用終了後又は停止中の不正接続対策

出典:厚生労働省ホームページ「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版(令和4年3月)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000936160.pdf

電子カルテは単体で稼働しているわけではありません。運用するためには、パソコンやタブレットなどの端末、サーバーや専用機器(オンプレミス型の場合)、プリンターなどの外部機器と、機器を動かすソフトが必要不可欠です。
外部機器は消耗品であるため、状態確認を定期的に行ない、必要に応じて買い替えます。ソフトは更新連絡が届いたら確実にアップデートを行ない、いつでも電子カルテをスムーズに使えるように管理しておきましょう。

マニュアルの管理

(9) 教育と訓練
a マニュアルの整備

出典:厚生労働省ホームページ「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版(令和4年3月)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000936160.pdf

電子カルテを導入する際、システムの提供元からマニュアルをもらえることがほとんどです。操作方法やトラブル時の連絡先など重要な情報がまとめられているため、電子カルテを利用するスタッフ全員がいつでも確認できるようにしておきましょう。

また、電子カルテの扱いについて、クリニックで独自にマニュアルを作成した場合には、それもセットで保管・管理しておくと便利です。

教育と訓練

(9) 教育と訓練
b 定期又は不定期なシステムの取扱い及びプライバシー保護やセキュリティ意識向上に関する研修

出典:厚生労働省ホームページ「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版(令和4年3月)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000936160.pdf

電子カルテの使い方については、導入時に訓練することになります。ただ、導入後にスタッフが入れ替わることも考えられるため、導入時の訓練状況を動画に残したり、訓練マニュアルを作成したりして、新しく入ったスタッフにも他のスタッフと同様の訓練が行える環境を整えておきましょう。

電子カルテの導入や運用について悩む医療機関や担当者は多いでしょう。しかし、ポイントを押さえて電子カルテシステムを選び、ここで解説した「運用管理規定項目」に沿った院内ルールを設定することで、スムーズに導入・運用することができるでしょう。

電子カルテを導入して無床クリニックでの業務を効率化させよう

病院よりも規模の小さなクリニックでは、電子カルテの導入に消極的になっているところが多いのが現状です。しかし、ICTの活用が進むなかで電子カルテの導入は必要不可欠と言わざるを得ません。

電子カルテを導入するにあたっては、現状やメリット・デメリット、自身のクリニックに合った電子カルテの選び方などを知ることが必要です。
適切な電子カルテを選んできちんと運用すれば、日々の業務の効率化が可能です。

電子カルテについてはこちらの記事でもまとめていますので、併せてご覧ください。
「電子カルテとは?概要や導入するメリット、移行手順をわかりやすく解説」

電子カルテ導入前に知っておきたいポイントがわかる!

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