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在宅医療が推進されている背景とは?制度や取り組みについても解説

お役立ち記事

在宅医療の必要性が強く唱えられるようになっていますが、実際には十分な在宅医療が行われているとは言えない状況です。
なぜ今、在宅医療の推進が求められているのでしょうか。
また、推進するにあたって具体的にどのようなことが行われているのか、どのような課題があるのかなどについても知っておくことが重要です。

この記事では、在宅医療が推進されている背景、抱えている課題、それらに対する具体的な取り組みなどについて、簡単に、わかりやすく解説します。

在宅医療が推進されている背景

在宅医療が推進されている背景には、日本国内で進む高齢化、そして患者の希望が関係しています。
厚生労働省・第2回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループの参考資料「在宅医療の現状について」によると、在宅医療のうち医療計画に沿って定期的に治療を行う訪問診療の2019年の件数は約79万5,000件で、2006年の約19万8,000件と比べて大幅に増加しています。さらに、2019年の件数において、訪問診療を受ける患者の約9割が75歳以上となっています。

日本では、2025年に団塊の世代が75歳以上になることで、75歳以上が全人口の18%を占めるとされています。そのため、高齢者による在宅医療の需要は、今後ますます増えていくでしょう。

しかし、同じく厚生労働省の中央社会保険医療協議会 総会(第486回)の資料「在宅(その1)在宅医療について」によれば、国民の約3割が自宅で最期をむかえたいと希望しているにもかかわらず、多くの人は病院で亡くなっています。つまり、患者の希望を叶えられる在宅医療の体制が整っていないのです。

在宅医療を推進するための制度

在宅医療を推進するため、これまでさまざまな制度が設けられてきました。ここでは、在宅医療に関する主な制度を紹介します。

年代 できごと
1980年 「インスリン在宅自己注射指導管理料」の創設
1984年 緊急往診の加算の創設
1985年 第一次医療法改正により、地域医療計画の創設
1986年 「寝たきり老人訪問診療料」「各種の指導管理科」の新設
老人保健施設の創設
1991年 老人訪問看護制度の創設
1992年 第二次医療法改正により、「寝たきり老人在宅総合診療科」の誕生
1994年 在宅時医学管理料・在宅末期総合診療科・ターミナルケア加算の創設
指定訪問看護制度の創設
1996年 在宅末期医療総合診療科の適用の拡大
在宅患者末期訪問看護指導料の新設
1997年 第三次医療法改正により、地域医療支援病院の創設
2000年 24時間の在宅医療の提供体制の評価(24時間連携加算の創設)
介護保険法の施行
2006年 第五次医療法改正により、在宅療養支援診療所が創設
2008年 在宅療養支援病院の創設
2012年 機能強化型在宅療養支援診療所・病院の創設

上表より、およそ40年前からさまざまな制度が創設されていることがわかります。

在宅医療を推進するうえでの課題

今後も高齢化が進行していく以上、日本において在宅医療の普及は急務です。しかし、さまざまな課題を抱えているために、体制の整備はなかなか進んでいません。

在宅医療では、患者の病状に応じて複数の専門職でチームを組むことがあります。しかし、人数が増えると連携が取りにくく、チームメンバー間で治療方針について意見が分かれた際に合意形成がスムーズにできないリスクが存在します。そうなると、治療の進捗に遅れが生じる可能性があります。

また、近年は医師不足が深刻化しており、そのほかの医療従事者も十分に数が足りているとは言えない状況です。そのため、在宅医療を提供したいという志があっても実行できないでいる医療機関もたくさんあります。

さらに、在宅医療をスムーズに提供するには、本人だけでなく家族の協力も必要になりますが、なかには本人や家族の理解を得られないケースもあります。家庭内での看護や経済的な負担など、さまざまなきっかけで在宅医療に対して消極的になることが考えられます。

在宅医療に課題があるのは事実ですが、根気強く対策を取ることで改善していくことは十分可能です。
在宅医療の課題への対策についてくわしく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
在宅医療が抱える課題とは?現状と対策について解説

在宅医療を推進するための地方包括ケアシステム

在宅医療を推進するには、医療機関だけでなく、地域住民や行政などさまざまな立場の人の協力が欠かせません。ここでは、在宅医療を推進するために厚生労働省が主導している「地方包括ケアシステム」について説明します。

地域包括ケアシステムの概要

厚生労働省では、2025年を目処として地域包括ケアシステムの実現を目指しています。

地域包括ケアシステムとは、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で最期まで自分らしく生活していくための地域の包括的な支援・サービス提供体制のことです。具体的には、高齢者に対する住まい・医療・介護・予防・生活支援の連携が、地域の自主性に基づいて構築されることが求められています。

地域包括ケアシステムが求められた背景

日本では2025年に全人口の18%が75歳以上となります。さらに、核家族化が進んだことで単身高齢者が増えています。単身高齢者は家族によるケアを受けることが難しく、国の医療・介護サービスに頼らざるを得ません。しかし、医療や介護などを提供する側の人手不足は深刻で、実際には高齢者を支えきれていないのが現実です。

そこで政府は、これまで国が主体となって行ってきた医療・介護サービスを、自治体主体にしていくことを検討し始めました。そうして2014年に制定されたのが、地域包括ケアシステムの推進について定めた「医療介護総合確保推進法」です。ここから、各自治体の主体性に基づいた地域包括ケアシステムの構築が始まりました。

地域包括ケアシステムを構築するプロセス

各自治体は、2025年に向けて3年ごとに介護保険事業計画の策定・実施を行い、地域包括ケアシステムを構築していきます。内情は自治体ごとに異なるため、構築されるシステムは画一的なものにはなり得ません。ただ、システムの構築は大まかに以下のようなプロセスで行われます。

  1. 地域の課題の把握と社会資源の発掘
  2. 地域の関係者による対応策の検討
  3. 対応策の決定・実行

基本的にはこのPDCAサイクルを回していくことで、自治体の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築していくのです。

在宅医療推進における地方自治体の取り組み

ここでは、在宅医療推進のために地方自治体で行われている取り組み事例を3つ紹介します。

東京都

東京都で行われている在宅医療推進のための取り組み事例は、以下の通りです。

・区市町村在宅療養推進事業
・在宅療養環境整備支援事業
・在宅人工呼吸器使用者療養支援事業
・切れ目のない在宅医療体制整備支援事業
・在宅療養に係る多職種連携連絡会の運営
・在宅療養研修事業
・東京都多職種連携ポータルサイトの運営
・東京都在宅療養推進会議等の開催
・広域連携支援
・入退院時連携強化事業
・在宅療養研修事業
・在宅療養研修事業
・在宅医療参入促進事業

上記の取り組みより、在宅療養体制の確保やデジタル技術を活用した情報共有の充実、医療・介護に関わる人材の育成や確保など、さまざまな方面から在宅医療の推進を図っていることがわかります。

特に、地域の病院・診療所・訪問看護ステーション・医師会などが連携することで、継続的な24時間体制が構築されるように注力しています。

埼玉県

埼玉県では、在宅医療推進のために以下のような取り組みが行われています。

・患者急変時の対応として、ファーストコールを訪問看護ステーションが受ける体制の周知
・在宅医療関係者に対する研修や情報共有の支援
・在宅医療について地域住民への普及啓発

特に、1つ目の取り組みにあるような、患者の状態に応じた医療機関の役割分担を明確化させることを目指しています。これは、在宅医療におけるマンパワー不足を解消することにつながっていきます。

横須賀市

神奈川県横須賀市は高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が2020年現在で約31.8%と非常に高いため、在宅医療の推進は急務となっています。そのため、2011年度から在宅医療の体制づくりに着手し、以下のような取り組みが行われてきました。

・在宅療養連携会議の発足
・在宅療養シンポジウムの開催
・多職種合同研修会の開催
・ケアマネジャー・ヘルパー対象研修の開始
・まちづくり出前トークの開始
・開業医向け在宅医療セミナーの開始
・病院職員向け在宅医療出前セミナーの開始
・在宅医同行研修の開始
・市民啓発用 在宅療養ガイドブックの作成

上記の取り組みを見てみると、地域連携や関係者への情報共有、研修、地域住民への普及啓発など、幅広い取り組みを段階的に行ってきたことがわかります。こうした取り組みを受け、横須賀市の在宅療養支援診療所の数は取り組み前より増えたと報告されています。

在宅医療の推進のため、国だけでなく地方自治体でもさまざまな取り組みが行われています。自身の医療機関がある自治体でどんな取り組みが行われているか、確認してみるとよいでしょう。

在宅医療を推進して今後も進む高齢化に備えよう

高齢化が進んでいる日本において、在宅医療は重要な分野です。そのため、これまでにもさまざまな制度がつくられ、推進が図られてきました。しかし、マンパワー不足や専門職間での連携不足などの課題もあり、在宅医療を希望する患者に十分な医療を提供できているとは言えないのが現状です。

ただ、国や地方自治体では、在宅医療を推進するためのさまざまな取り組みを行っています。今度ますます進んでいく高齢化に備えるためにも、在宅医療を推進するための取り組みを根気強く続けていくことが重要です。

きりんカルテでは、在宅医療を始めるにあたって役立つポイントをまとめた資料を配布しています。ぜひ参考にしてください。

お役立ち資料『在宅医療を始める際に知っておきたい「4つのポイント」』

在宅医療で大事な4つのポイントを解説!

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