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在宅医療が抱える課題とは?現状と対策について解説

お役立ち記事

在宅医療は高齢化が進む日本において、年々重要度が増している医療分野です。
高齢患者の増加に伴い、外来での通院が難しくなり在宅医療や訪問診療を希望するケースは今後さらに増えてくるでしょう。
しかし、さまざまな課題を抱えていることから、十分な医療が提供されているとは言いにくいのが現状です。

この記事では、在宅医療の現状と課題、今後行うべき対策などについて、簡単に、わかりやすく解説します。

在宅医療とは

在宅医療とはどういったものを指すのでしょうか。ここでは、在宅医療の概要やメリットについて改めて整理しておきましょう。

在宅医療の概要

在宅医療とは、通院することが難しい患者を対象に、医師や看護師などが自宅を訪ねて医療を施すことです。この「医療」には、理学療法士や作業療法士によるリハビリや、薬剤師による服薬指導なども含まれます。主に寝たきりなどで移動が難しい患者に対して行われることが多いですが、病院や診療所に行くための交通手段がない患者も対象となることがあります。

在宅医療は「訪問診療」と「往診」に大別されます。「訪問診療」とは医師が立てた診療計画に沿って定期的(週に1回、月に2回など)に行われる在宅医療で、「往診」とは容態の急変などの緊急事態が起き、医師が必要と判断したときに行われる突発的な在宅医療のことです。

在宅医療のメリット

在宅医療の最大のメリットは、患者が慣れ親しんだ場所で医療を受けられることでしょう。食べ慣れた味付けの食事をしたり、大切な人との生活を送ったりと医療機関よりも行動の自由度が高く、精神的にも落ち着けるため、患者が医療に対して感じるストレスを軽減できます。

また、医師や看護師が訪問してくれるため、通院にかかる労力を減らせることもメリットです。長い待ち時間もなく、家族が通院の付き添いをする必要もなくなるため、患者とその家族の体力面での負担を抑えられます。

さらに、近年は新型コロナウイルス感染拡大によって、在宅医療の必要性に改めて注目が集まるようになりました。筑波大学の研究では、感染拡大防止のため入院患者との面会制限が設けられているという理由から、多くの患者や家族が在宅医療を希望するようになったと指摘されています。

在宅医療のデメリット

在宅医療のデメリットとして挙げられるのは、医療機関のような設備がないため、精密な検査や手術などを即座に行えないことです。

また、患者がずっと自宅にいることから、同居する家族に大きな負担がかかることも在宅医療のデメリットです。患者の容態が急変したとしても、家族だけでは対応できないことが多く、医師や看護師が自宅に到着するまでに一定の時間がかかるため、処置が間に合わないケースもあります。

在宅医療の現状

厚生労働省が公開している資料「在宅医療の現状について」によれば、在宅医療のうち訪問診療の件数は年々増加しており、2019年には80万件にせまる数となりました。さらに、訪問診療を受ける患者の約9割が75歳以上の高齢者という結果も出ています。そのため、2025年には75歳以上が全人口の18%となるとされている日本において、在宅医療の需要が増えることは間違いないでしょう。

しかし、同じく厚生労働省が公開している資料「在宅(その1)在宅医療について」では、国民の約3割が「最期をむかえるときに生活したい場所」として自宅を挙げているものの、実際に死亡した場所は病院である人のほうが多いという調査結果が出ています。つまり、患者の希望を叶えられるだけの在宅医療の体制が整っていないのが現状なのです。

在宅医療の課題


高齢化が進む日本において需要が高まっているにもかかわらず、在宅医療の体制の整備が進んでいないのは、さまざまな課題が存在するからです。ここでは、在宅医療が抱える課題について説明します。

多職種連携が取りにくい

前述したように在宅医療には、医師が提供する診療のほか、看護師によるケアや薬剤師による服薬指導、理学療法士や作業療法士によるリハビリなども含まれます。そのため、患者の病状によっては複数の専門職でチームを組んで医療にあたることになります。しかし、複数人が関わることで連携を取るのが難しくなる場合があります。

例えば、関係する人数が多いために、全員で患者についての情報交換をする機会が持てなかったり、同じ患者の治療にあたる医師同士や看護師同士で、情報共有が不十分だったりすることが起こりえます。

このように治療方針に関する意思疎通が不十分な状態では、患者の治療に遅れが出る可能性があります。在宅医療の関係者間の連携不足は、患者の治療に影響を及ぼす課題といえます。

本人や家族の理解を得られない場合がある

一口に在宅医療といっても、家庭の状況は患者によってさまざまです。なかには、家族が患者の看護に非協力的だったり、治療の必要性を理解できなかったりするケースもあります。そのほか、在宅医療に関する制度の煩雑な手続きや自宅での看護を負担に感じ、在宅医療に対して消極的になるケースもあるでしょう。

また、患者本人が単身者(独居老人)で看護してくれる家族がいなかったり、認知症などを発症して判断力が衰えていたりすると、さらに対応は難しくなります。

さまざまな課題があるために、日本の在宅医療の体制は整っているとはいえないのが現状です。そのため、各課題への対策が求められています。

在宅医療の課題への対策

在宅医療の抱える課題を解決しなければ、今後も増え続ける需要に対応することは難しいでしょう。ここでは、在宅医療が抱える課題への対策について説明します。

医師をサポートする体制をつくる

近年は医師不足が深刻化していることもあり、在宅医療では医師にかかる負担が多くなりがちです。患者の急変にできる限り対応する体制を維持するには最低でも2~3人の医師が交代制を取る必要があり、時間的な拘束が大きくなってしまいます。

そのため、看護師をはじめとする他の専門職や地域によるサポートが必要になります。
例えば、訪問看護を導入して必要なときだけ医師が対応したり、住民同士の見守りシステムを構築して単身の患者の急変を見逃さないようにしたり、といった具合です。

また、医師をサポートする体制をつくるのに役立つツールとして、電子カルテがあります。複数の専門職間での連携を取るのが難しい場合には、電子カルテの導入がその一助になる可能性があります。電子カルテの文書機能を活用すれば、薬剤師やケアマネジャーや介護支援専門医への情報共有のための文書の発行業務を効率化することができます。

本人や家族ときめ細かいやり取りをする

患者本人やその家族に在宅医療の治療内容を理解してもらえない要因の1つとして、コミュニケーション不足が挙げられます。スムーズに在宅医療を進めるためには、本人や家族ときめ細かいやり取りを重ねることが重要です。

治療に関する質問を受け付けたり、不安に感じていることや要望を聞き取ったりして、患者や家族から信頼を得られるように心がけます。その際、要望をすべて受け入れるのは難しいですが、できるだけ尊重する姿勢は忘れないようにしましょう。

在宅医療はいくつもの課題を抱えていますが、医師・看護師をはじめとした医療従事者、患者本人や家族などさまざまな立場の人が連携・協力することで、少しずつでも改善していくことが重要です。

在宅医療の課題に対する解決策を講じて適切な診療を提供しよう


高齢化が進む現代の日本において、慣れ親しんだ自宅で治療を受けられる在宅医療の重要性はますます高まっています。しかし、さまざまな課題から在宅医療の普及はあまり進んでおらず、在宅医療を希望する患者のニーズに十分に対応できているとは言い難いのが現状です。

とはいえ、満足度の高い診療を患者に提供するためにも、課題に対する解決策を講じていく必要があります。

在宅医療を始めるうえで知っておきたいポイントをまとめた資料がありますので、在宅医療の提供を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
お役立ち資料『在宅医療を始める際に知っておきたい「4つのポイント」』

在宅医療で大事な4つのポイントを解説!

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