医療経営を成功に導く5つの秘訣とは?医療コンサルタントが徹底解説 vol.2
「そろそろ独立して自分の医院を持ちたい」――そう思い立ったものの、何から手をつけていいかわからないと頭を悩ませる医師の方は意外と多いようです。今回は「ひろせ税理士法人」で医療コンサルタントを務める常田幸男氏と税理士の西本順一氏に、新規開業にあたって大切な5つの秘訣を伺いました。(vol.1はこちら)
認定登録医業経営コンサルタント登録番号7130
平成10年 廣瀬伸彦税理士事務所(現ひろせ税理士法人)に入社/副所長
クリニックの新規開業から医療法人化、医業承継まで…院長先生の一生涯にお供します。
平成24年 税理士登録。平成19年 ひろせ税理士法人に入社/社員税理士
複数ある税法の中でも、法人税法・所得税法・消費税法を特に得意分野としています。
医業クライアントに対して、最新・最良・最適な税制面でのご提案を致します。
院内のルール策定が今後の経営を左右する
採用後のスタッフの配置はどう考えるべきですか。
常田面接で採用したいスタッフを絞ったら、勤務できる条件をヒアリングし、仮のシフトを作ってみましょう。このとき常勤スタッフのみでかためる医院が多いのですが、最初のうちは常勤と非常勤を組み合わせてシフトを組むことをおすすめします。というのも、常勤だけで構成すると1人退職したときの痛手が非常に大きいのです。非常勤スタッフを数名確保しておくと、その中から優秀な人を常勤スタッフとしてスカウトすることもできる。こうして組織を作っていくのも、医療経営を成功に導くコツです。
開業前にスタッフと共有しておくべきことは?
常田院内ルールの策定と共有が重要です。弊社ではチェックリストを院長先生にお渡しし、スタッフと話し合いながら自院のルールを策定してもらうようにしています。意外と肝心なのは「呼称」ですね。さん付けなのかニックネームなのかをあらかじめ決めておかなければ、開業後に統制がとりづらくなってしまうんですよ。
常田また、開業1カ月前からスタートするスタッフ研修が大事になります。初日は自己紹介や制服採寸など事務的なことを、2日目以降は電子カルテや医療機器の操作など、開業に向けてトレーニングを積み上げていくことになります。
それ以外に採用で注意すべきことはありますか。
西本事業所として労災保険への加入が必須ですし、週20時間以上勤務するスタッフは雇用保険に入らなければなりません。このあたりの手続きは複雑なので、専門家に丸投げしてしまいましょう。また、スタッフは労働基準法で定期健康診断が(※週30時間以上勤務するスタッフに限る)、感染症法で結核健康診断が定められていますので、忘れずに確認してください。あと、これはちょっとした工夫ですが、給与の振込口座は特定の銀行に統一しておくと手数料が煩雑にならずに済みますよ。
相棒となる電子カルテはサポート体制にも着目して
最近は「電子カルテ」を導入する医院が増えています。専門家から見てどう思われますか。
常田確かに近頃はさまざまな企業が電子カルテを開発していますね。機能面や使いやすさも大切ですが、個人的にはその後のサポート体制や会社の規模感に注意して選ぶのが良いと考えています。ベンチャー企業のような小さな会社が始めた電子カルテを使ったところ、その会社の経営が立ち行かなくなりサポートが受けられなくなったという声も聞くので……。
クラウド型とオンプレミス型、初期投資費用が抑えやすいのはどちらだと考えますか。
常田最近は社会的認知が進んでいることもあり、クラウド型を選ぶ先生が増えているようです。初期投資費用も数百万円ほど安くなるので選択しやすいのだと思います。実際にクラウド型電子カルテを使っている先生から「すらすら動いて使いやすい」という前向きな感想はよく聞きますね。
西本最近は在宅医療をメインにしたい先生も増えてきているので、クラウド型電子カルテは相性がいいと思います。
在宅医療、増加傾向にあるんですね。
常田はい。私たちとしても、外来と在宅を組み合わせて事業計画を描けると大きな収入の柱が2つできるので、おすすめしていますね。何にしても新規開業には不安がつきものです。まずは開業までのタイムラインを把握して、着実に動かしていきましょう。