電子カルテとは?概要や導入するメリット、移行手順をわかりやすく解説
電子カルテとは、患者の診察内容や診断結果などを電子化して保存したものを指します。これまで紙カルテにまとめていた情報を電子カルテに切り替えることには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。また、実際にどのようにして電子カルテを導入すればよいのでしょうか。
この記事では、電子カルテの概要や導入するメリット・デメリット、導入する際の手順をわかりやすく解説します。
電子カルテの基礎知識
ここでは、概要をはじめとする、電子カルテの基礎的な知識について解説します。
電子カルテとは
患者の診察内容や診断結果、処方した薬などの情報を記録した文書をカルテといいますが、電子カルテとは、カルテに記載するこれらの情報を電子化して保存したものを指します。
医者は患者を診察しながら、診察室にあるパソコンで診察内容や患者の症状などを記入していきます。診察室にいない別の医師や看護師などにも、タブレットで電子カルテを共有することで、リアルタイムで診療情報を確認することが可能です。
紙のカルテをメインで使用している病院や診療所もまだみられますが、医療業界もICTの活用が進んでいるため、電子カルテの普及率は徐々に高まっています。
電子カルテの種類
ひとくちに電子カルテといっても、「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に大別されます。ここでは、それぞれの特徴について解説します。
【クラウド型電子カルテ】
クラウド型電子カルテとは、オンライン上のサーバーで提供されているサービスを、インターネット回線を介して利用するタイプの電子カルテです。
オンプレミス型のように自身の病院や診療所にサーバーや専用機器を置く必要がないため、導入にかかるコストや労力を抑えられます。また、サービスを提供しているサーバー側が基本的なシステム管理を行うため、サービスの保守やメンテナンスにかかる手間も少なくて済みます。
【オンプレミス型電子カルテ】
オンプレミス型電子カルテとは、自身の病院や診療所にサーバーや専用機器を設置し、自分たちで運用を行うタイプの電子カルテです。
オンプレミス型はカスタマイズの自由度が高く、クリニックや診療科に合わせた運用体制を構築することができます高。また、クラウド型のようにオンラインで情報を管理する際に問題となるセキュリティについても、オンプレミス型は自身の病院や診療所内でシステムが完結するため、情報流出の可能性は低いでしょう。
電子カルテの普及率
近年、電子カルテは全国で普及が進んでいます。厚生労働省が公開している「電子カルテシステム等の普及状況の推移」によると、2008年には一般病院で14.2%、一般診療所で14.7%だった電子カルテの普及率が、2020年には一般病院で57.2%、一般診療所で49.9%にまでなっています。
出典:厚生労働省ホームページ「電子カルテシステム等の普及状況の推移」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000938782.pdf
ただし、同じく厚生労働省の「諸外国における医療情報の標準化動向調査」によると、諸外国との普及率の差は圧倒的です。アメリカでは80%、スウェーデンでは90%、イングランドでは99%、シンガポールでは80%となっており、電子カルテがほぼ当たり前となっています。
電子カルテ導入のメリット・デメリット
電子カルテの導入には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット1:患者の医療情報の管理・共有がしやすい
メリット2:業務の効率化につながる
メリット3:保存する際に場所を取らない
デメリット1:人的・金銭的なコストがかかる
デメリット2:停電時に使えなくなる
医療業界でもICTの活用が進んでいる以上、電子カルテの導入は必要不可欠です。ただ、デメリットについても把握し、万が一の場合でも対応できるように対策を立てておくことを忘れないようにしましょう。
紙カルテから電子カルテへ移行する手順
病院や診療所を開院する際に電子カルテを導入するのであれば、それほど手間はかからないでしょう。しかし、紙カルテを使っていた医療機関が電子カルテに切り替える際には、手順を踏んで段階的に行っていく必要があります。ここでは、紙カルテから電子カルテへ切り替えるときの流れについて説明します。
1.電子カルテシステムを選ぶ
まず行うのは、導入する電子カルテシステム選びです。近年は多くの電子カルテシステムが提供されており、それぞれで特徴が異なるため、自身の病院や診療所に合ったものを選ぶ必要があります。選ぶ基準として、必要な機能があるか、初期費用や維持費が予算内におさまるか、使い勝手が良いかなどを意識しましょう。
2.電子カルテの操作方法を習得する
導入する電子カルテシステムを決めたら、スタッフに対して使い方の研修を行ったり、後からでも使い方を確認できるようにマニュアルを作成したりします。スタッフ全員で電子カルテの使い方を共有しておかないと、導入後の業務に影響が出てしまうでしょう。
また、研修やマニュアル作成は日々の業務とは別で行うことになるため、一時的にイレギュラーな体制になることをスタッフに納得してもらうとともに、スケジュールやシフトを適宜調整する必要があります。
3.紙カルテと電子カルテを併用しデータを入力する
電子カルテシステムの使い方を習得したら、これまで使っていた紙カルテの情報を電子カルテへ入力していきます。紙カルテの量が多くなければ、集中的にデータ入力を行って移行すれば良いですが、量が多い場合は少しずつ入力していくようにしましょう。
データ入力の際は、「再診の患者が来たら、その患者のデータを電子カルテに入力する」「1日に◯人分の入力を行う」などのルールを設けるのがおすすめです。データ入力が日々の業務の妨げになっては本末転倒なので、多少時間がかかっても、自身の病院や診療所がかけられる工数に合ったやり方で移行していきましょう。
電子カルテへ移行する際の注意点
紙カルテから電子カルテへ移行する際には、注意すべき項目がいくつかあります。ここでは、代表的な注意点2つについて解説します。
移行するカルテの期限を区切る
診療データを電子カルテへ移行する際は、「3ヵ月以内に通院している患者のみ」といった具合に、データ入力をする紙カルテの期限を区切るようにしましょう。
病院や診療所によって保管している紙カルテの量はさまざまですが、そのすべてを移行するのは膨大な時間がかかります。そのため、1度かかったきりであったり、長期間来ていなかったりする患者より、定期的に通院している患者のデータ入力を優先して行いましょう。入力するデータに優先順位をつけることで、効率的に電子カルテへの移行が進められます。
電子カルテの利用について院内ルールを設ける
電子カルテシステムの使い方について研修で学んだとしても、パソコンに不慣れだったり、紙カルテとの違いに戸惑ったりするスタッフもいるでしょう。診療情報の共有ができないと業務に支障をきたすため、電子カルテの利用について院内ルールを設け、スタッフ全員に周知徹底する必要があります。
例えば、どのタイミングで誰が電子カルテの電源を入れるか、IDやパスワードはどう管理するか、患者に関する申し送りはどういう形式でどこに入力するかなど、日頃の使い方について明確に決めておきましょう。
電子カルテに移行する際は、移行するときだけでなく、実際の運用でどういう課題が起こりえるかを見据えて対策することが重要です。
医療現場の業務効率化には電子カルテが有効
患者の診察内容や診断結果などを記載したカルテを、パソコンやタブレットなどを使って電子的なデータとして保存したものが「電子カルテ」です。
電子カルテにはさまざまなメリットがあるため、その普及率は年々高まっています。ICTの活用が進んでいく今後の医療業界において、電子カルテの導入は必要不可欠です。
導入にあたって大変なのは、紙カルテから電子カルテへ切り替え作業です。作業の進め方は、たとえ時間がかかったとしても、自身の病院・診療所がかけられる労力とコストにあったやり方で行うようにしましょう。
今後ますますICTの活用が進み、クリニック業務のさらなる効率化が求められるようになっていきます。情勢の変化にスムーズ対応するために、電子カルテの導入をぜひ検討してみてください。