2025年高齢化問題と地域医療構想の鍵:第7次医療計画にみる「在宅医療」の重要性
在宅医療の需要
経済産業省・経済解析室が毎月公表している第3次産業活動指数の内訳系列の中の「医療業指数」において、在宅医療の需要は病院・一般診療所指数と歯科診療所指数のどちらも右肩上がりで伸びていると発表しています。
また、世界における在宅医療機器の市場規模をみても、2020年の336億3520万米ドルからCAGR7.0%で成長し、2028年に571億290万米ドルに到達すると予想されていることからも、在宅医療自体の需要性が今後ますます高まると考えられます。
ここでは、今後、訪問診療や往診を検討している在宅医療の受診者数の推移や診療報酬点数の割合からみる在宅医療の需要をはじめ、施設基準や診療報酬の改定内容などをお伝えします。
2017年には在宅医療の受診者が過去最高に
厚生労働省が公表したデータによると、2017年における1日当たりの患者数を推計した「患者調査」の概況において、在宅医療を受けた推計外来患者数は2014年の前回調査から2万4000人増の18万100人で、1996年の統計開始以降で最多を記録しています。
下図の「在宅患者訪問診療料、往診料のレセプト算定件数の推移」をみると、2006年には月に19万8,166件だった訪問診療のレセプト数が、2014年には64万5,992件にまで大幅増加していることがわかります。
出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000155814.pdf
Topic1:在宅医療とは?
在宅医療とは患者様のご自宅で主には以下のような医療行為を行うこと
- 医師による訪問診療
- 看護師による訪問看護
- 理学療法士による訪問リハビリテーション
- 歯科医師による歯科診療
在宅医療を行う診療所は、診療や診察を行う医療施設のうち、所定の施設基準をクリアした施設「在宅療養支援診療所」と、複数人の医療体制や往診や看取りなどの実績を基準にした「機能強化型在宅支援診療所」があります。
背景には「2025年高齢化問題」と「地域医療構想」
在宅医療が増加する背景には「2025年問題」とよばれる問題が関係しています。
日本の総人口(特に生産年齢人口)の減少や高齢化率の高まりなどによって、今後日本の人口構造が大きく変化することが明らかになっています。2025年は、団塊の世代が75歳以上を迎える年であり、後期高齢者人口の増加に伴い、医療・介護の需要が2030年に向けて最大化することで、社会保障給付費の増大による財源確保の問題など医療制度の持続可能性が懸念といえます。
いわゆる「2025年問題」は社会全体に多大な影響を与え、中でも医療への影響が最も大きく、国全体として早急な対応を迫られています。
また、人口構造の変化においては、地域差も課題の一つとなっており、医療制度の持続可能性を確保していくためには、それぞれの地域ごとの医療需要に応じた医療提供体制の整備も求められています。
そのため、医療の機能に見合った資源の効果的かつ効率的な配置を促し、急性期から回復期、慢性期まで患者が自身の状態に見合った病床で、よりふさわしく、より良質な医療サービスを受けられる体制を作ることが必要とされているのです。このことから、地域医療構想の実現が重要視されています。
出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/dl/07.pdf
Topic2:地域医療構想とは?
地域医療構想については厚生労働省「地域医療構想について」で詳しく説明があります。
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000094397.pdf
第7次医療計画(中間見直し)方針における「在宅医療」
2018年にスタートした第7次医療計画の中間見直しにあたっては、在宅医療分野では「在宅医療充実に向けた市町村の取り組みを都道府県が支援する」視点が重視される内容となりました。
都道府県において取り組むべき事項を整理した、2019年1月29日付の「在宅医療の充実に向けた取組の進め方について」を指針に反映させることとしました。
参照:在宅医療の充実に向けた取組の進め方について
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000584562.pdf
出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000210765.pdf
出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000584474.pdf
診療報酬点数にしめる在宅医療の割合
医科診療の診療報酬点数を診療行為別にみると、2018年6月の医科診療全体のうち、在宅医療の割合は全体の中で3.4%と、割合としては小さいですが、在宅医療の点数は、2008年から2018年の間に約1.8倍と伸長。これは医科診療の点数全体の伸び(約1.3倍)よりも大きく、全体的に右肩上がりの医科診療の中でも、特に在宅医療の需要が増えていることがわかります。
また、年齢階級別の伸びについては、在宅医療は0~19歳、20~39歳、75歳以上で2008年比2倍以上と大きく伸びていますが、他の年齢階級でも増えていることがわかります。
出典:経済産業省ホームページ
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20200324hitokoto.html
訪問診療を実施する診療所は2万件超え、実施主体別のおよそ9割が診療所
厚生労働省の「平成26年度医療施設調査」によると、訪問診療を実施する診療所の総数は20,597施設で、近年の増加数は横ばいとなっています。在宅療養支援診療所(在支診)ではないが、在宅医療サービスを提供する一般診療所が相当数あるとしています。
出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000155814.pdf
Topic3:在宅療養支援診療所の施設基準
「在宅療養支援診療所」とは、地方厚生(支)局長に届出て認可される病院・医院の施設基準のひとつで、以下の項目を満たすこととなっています。
- 患者様を直接担当する医師または看護師が、患者様およびそのご家族様と24時間連絡を取れる体制を維持すること。
- 患者様の求めに応じて24時間往診の可能な体制を維持すること。
- 担当医師の指示のもと、24時間訪問看護のできる看護師あるいは訪問看護ステーションと連携する体制を維持すること。
- 緊急時においては連携する保険医療機関において検査・入院時のベッドを確保し、その際に円滑な情報提供がなされること。
- 在宅療養について適切な診療記録管理がなされていること。
- 地域の介護・福祉サービス事業所と連携していること。
- 年に一回、在宅でお看取(みとり)した方の人数を地方厚生(支)局長に報告すること。
令和2年度診療報酬改定「質の高い医療」へのプラス改定
令和2年4月の診療報酬改定では、改定率は 診療報酬 +0.55%、薬価-0.99%、材料等-0.02%となり、全体としてマイナス改定となったものの、診療報酬自体はプラス改定となりました。
令和2年度の診療報酬改定において在宅医療と訪問看護に求められた点は「医療的ケアの裾野を広げ、質の高さを確保する」ことと「地域包括ケア推進のため、自治体や介護施設との連携強化する」ことが図られたといえます。質の高い医療を提供する事業所においては加算できる要件が増え、収益を上げることができるようになったのが今回の診療報酬改定のポイントであるといえます。
在宅医療や訪問看護は医療費の増大化に伴う問題の解消や「住み慣れた地域で暮らす」という希望を叶えるための医療として、大きな役割が期待されています。
出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08316.html
「経済財政運営と改革の基本方針 2021」(骨太方針 2021)を閣議決定
2021年6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針2021)では【データヘルス改革】に関して「電子カルテの標準化」を推進することを提言。今後、医療のICT化促進がますます加速すると期待されています。
電子カルテについては、当時の技術状況を踏まえたベンダーの独自仕様や、独自のデータ格納形式によるオンプレミスのシステム、施設ごとのハウスコードの存在など、様々な医療機器との接続性等への対応が弱く、システムを接続するたびに発生するコスト負担が言及されていますが、今後の医療情報システムに求められる考え方として、「クラウドベースで効率的で安全なシステムとなる可能性も追求」されています。
参照:厚生労働省
「電子カルテ等の標準化について」より
https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/000685281.pdf
在宅医療に対応したクラウド型電子カルテ『きりんカルテ』
クラウド型電子カルテ『きりんカルテ』は、在宅医療にも対応。一般診療で使う電子カルテの機能に追加して在宅に特化した機能も充実しています。
『きりんカルテ』なら、インターネットに接続できればどこからでもカルテの記入・閲覧が可能です。
※カルテをお使いになる端末には、事前に設定が必要です。
使う場所を選ばないため、ノートパソコンを使って訪問先からカルテデータを入力するなど、業務の効率化にも役立ちます。これまでのように、往診先で紙やスマートフォン、ノートパソコンにメモしておいた内容を 院内に持ち帰ってからカルテに記録する、といった二度手間も必要ありません。
往診スケジュールの簡単作成
カレンダーの画面を見ながら、簡単に往診スケジュールの作成や変更ができます。
さらに、施設やエリアごとに患者さんを登録すれば、効率的に電子カルテを検索したり、往診スケジュールを組むことができます。
事前のオーダー入力
診療予定日のオーダーを事前に入力しておくことができます。処方箋も事前に出力・印刷ができるので、事前準備をしたうえで診療することが可能です。
その他にも、訪問看護指示書や特別訪問看護指示書などの在宅医療に特化した帳票の作成、連動するレセプトコンピュータ「WebORCA」では、毎月の請求書をまとめて発行することができます。